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Author:赤島回初+akiko
北九州出身 現在も北九州在住
男性 心は永遠に青年
2007年4月 「マッチュウの種」発刊


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●心の二重生活

 通勤先の駅から事務所まで、およそ10分の道を、朝はただそれだけで汗ぐっしょりになりながら通っている。

 昨日の夜、その同じ道のりを駅に向かった。日が沈んだために、歩いていても汗をかかない。
 仕事のいくつかの成果と、積み残した課題から少しづつ心を解き放ち、作品の構想の世界へと、頭脳を没入させていく。
 歩きながら思考すると、なぜか発想が豊になり、構想の枝が広がっていく。
 仕事と執筆と、しばらくは、この心の二重生活が続くのだろう。

 列車に乗る直前、妻から電話がかかってきた。
 何事かと思うと、「杉山が帰ってきたよ!」と一言。
 バレーボールの日本代表に杉山が帰ってきて、ベンチ入りしたという意味である。
 我が家はみな、昔から女子バレーのファンだった。
 高橋や木村や、笑わない栗原も好きだけど、どちらかというと、職人肌の元キャプテンの吉原や佐々木、そしてブロード攻撃の杉山を応援してきた。
 杉山が今回はずれているのを見て、誰もが残念がっていた。
(家でビデオを観て、第3セットで、ようやく杉山が登場してきた時は、家族皆が拍手をした。そして、ブロード攻撃が見事に決まった時は、大きな歓声をあげた。そして、竹下が4度も続けて、杉山にトスを集めて、さすがに相手チームにブロックされた時は、思わず笑ってしまった)

 高校野球も何試合かTVで観戦した。高校野球は、あまりに真剣でひたむきで、感動的で、見終わったあとに、輝いている選手達と、ボーっとTVを見て時間を過ごしてしまった自分が対比されて、わずかに空しくなる。
 しかし、いろんなスポーツが持っている感動の力を、自分の作品にも吹き込みたいと思う。

 帰りの車中、黙りこくって読書をする。
 今日は「乙武レポート」の文庫本を読む。立ったままの一時間は、さすがに疲れる。

 駅から出ると、西の空に弓のように細い三日月が浮かんでいた。
 すぐに地平に消えていく三日月が、だんだん東に移っていき、満月に近づいていく、これからの10日間、僕も活力を高めていきながら、心の二重生活を楽しんでいくだろう。



 





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●高校時代の友人

 書き忘れていたけど・・
 7月の終わりに、高校時代の友人の家を訪ねた。とても久しぶりだった。
 若松の、周りが海水浴場だらけの、田舎の風情を残している所だった。
 その友人が、暗かった僕とは対照的に、高校生活を満喫している様子だけはかすかに記憶していた。

 意外な話を聞いた。
 彼は、僕が「いつも本ばかり読んでいて、誰とも口をきかないで、しかも成績は良かったから、一番、いじめられる対象だったのに、スポーツも万能で、体を鍛えていたから、誰も手を出さなかった」と言った。

 「事実、隣のクラスの優等生は、よく体育館の裏に呼び出して殴っていた」とも。
 僕は、その話を聞いて心底びっくりした。
 子どもの時から、運動神経には全く自信がない。かわいそうに、僕の血を継いだ子供達も全く運動は苦手である。

 しかも彼の奥さんからは、「主人からいつも、あなたは勉強も出来て、器械体操をやってて、全てが完璧だったと、聞かされてきました」とまで言われた。
 人の評判の危うさを本当に感じた。何か、教訓じみた物まで感じた。家内は、終始、大笑いしていた。
 ただ一つ嬉しかった事は、彼から「君はいつも、不思議な事に必ずクラスの最後列に座っていた。そして、いつも授業中でも本を読んでいた。僕は不思議と、いつもその前の席だったんで、何を読んでるのかって聞いたりして、そのおかげで本を読むようになった」と、聞かされたことだ。

 いつも、僕は「高校では、変な生徒だった」と、言っていたのに、彼の評価で、僕の株は随分と上がったけど、正当な評価ではないだけに、複雑な信教だった。
 
 それでも、家に帰って、小学校の時に言葉のいじめを受けた次男に、僕は威張って言った。ちょっと感じるものがあったから・・。
 「何か、自信になる物が一つでもあれば、いじめは受けなくてもすむ。そんなオーラが出るもんなんだ」と。

 そんな、僕の上目線のタカビーな教訓など、子供達は一切聞かずに、友人が別れ際にくれた手作りのスイカを、夢中になってほおばっていた。


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●いつも苦労する登場人物の名前

 登場人物の名前にはいつも苦労する。
 今日も、一時間以上かけて一人の人物の名前がやっと決まった。
 
 登場人物の名前を付けるのは、とても神経を使う。
 善人の場合は良いとして、悪人や不幸な人をあまり知っている人の
名前にはしたくない。
 一方で、言葉のリズムや語感が気に入っても、知人の名前と重なると、
いらざる誤解を生じるのではと、心配になる。
 作品が完成してしまえば、そんな努力は全く理解されないだろうけど、
僕はきっと、登場人物の名前には、こだわり続けてしまうような気がする。

●二通の手紙

 一昨日は、夜中まで起きていたのに、翌朝、あまりに暑くて6時前に起きてしまった。
 汗をぐっしょりとかいていた。
 昔の知り合いが出た、生々しい夢をはっきりと覚えていた。眠りが浅い方が夢を見るというのは本当だと思った。

 起きてから、二通の手紙を書いた。
 どちらも、家族を失った人への手紙である。いつも、死の問題が僕の頭から去らない。書き終えて、ぐったりと疲れた。
 どれだけの励ましになるか分からないけど、真心を込めて書かせていただいた。
 死の問題は、僕自身の創作の重要なテーマだ。

 創作をする中でどこまでも、その重いテーマと格闘をしていきたいと思っている。




 
 

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●すべすべのお肌

 過去に経験した事のないような猛暑が続いている。
 少し体を動かすと、すぐに大汗をかいて、そのたびに顔を洗い、タオルやハンカチで、顔をゴシゴシとぬぐっていた。(去年、甲子園をわかせたハンカチ王子のような、上品な汗のふき方じゃなく、本当にゴシゴシ吹かないと、流れ落ちる汗は収まらなかった)

 何気なく額にさわると、びっくりするほどツルツルになっていた。まるで、赤ちゃんの肌のように、きめの細かいすべすべの肌だ。
 面白がって、子供達にもさわらせてみた。
 みんな驚いて、面白そうに笑っていた。
 汗で、新陳代謝も活発になり、肌だけがとても若返ったのかも。
 熱中症には気をつけないといけないけど、この猛暑は、高価な洗顔クリームよりも、お肌のためには良さそうである。

●青いアサガオ

 家の窓から、駐車場の向こうにあるお屋敷の塀にかかったアサガオが見える。青紫の、生命力に満ちたアサガオで、去年は1000以上も開花していた。
 いくつかの花が散っても、新しいアサガオの花が咲いて、何日も何日も壮麗な姿を誇っていた。
 その情景から、マッチュウの種の「花のピラミッド」のイメージを思いついたんだけど、去年の秋、あまり繁殖しすぎて他の木に悪影響を与え出したのか、ばっさりと刈り取られていた。
 僕としては、とても残念である。家の持ち主の方は、あまりアサガオが好きじゃないんだろうか?それとも、家の中からは、あの1000を越えるアサガオの開花の見事さが分からなかったんだろうか?

 それでも、今年は数十の花を毎朝咲かせている。これから、秋までずっと咲き続けるはずである。
 そのアサガオを眺めながら、マッチュウを書いていた時の緊張感を思い起こし、新たな作品の創作に取り組んでいこうと思っている。


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●新作に着手

 今日、新しい作品の一行目を書き出した。
忙しさに終われる中、構想の仕上げを行い、やっと新作を創り始めることが出来た。
 テーマやメッセージやストーリーは、一ヶ所を残して、ほぼ出来上がっている。また、登場人物についても、マッチュウの時と同様に、作品を越えた時点まで考え抜いて、人物造形はすませている。
 頭の中で、無から有を作り出す楽しい時間だった。
 これからは、一枚一枚、原稿を積み上げていく、忍耐を要する作業に入っていく。

 現実に筆を起こして創作をはじめる時、僕の頭の中には、いつも高村光雲の「老猿」が思い起こされる。
 木彫りの見事な迫力を持った名作だが、ちょうど、あのひと彫りひと彫りが、これからの気をぬけない地道な作業に匹敵すると思う。
 一つの彫りだけで、作品全体の迫力と気品は現れないけど、ひと彫りでも手を抜けば、作品全体の格調を失墜させてしまうというような忍耐強い作業。

 今回の主人公は、マッチュウよりは少し大人で、高校三年生である。
構想の段階で、大まかな性格付けはしているけど、実際に作品を書き始めると、汗をかいたり、怒りで体を熱くしたり、恐怖に青ざめたり、血の通う人間として、生き生きと活動を始めていく。
 その手ごたえを感じれるのが、この段階での最高の喜びである。そして、時には、作者の意に反し、あるいは意思以上に、思いもかけぬ行動を取りはじめていく。
 マッチュウのときにも、何度もあった事だけど、時にはストーリーの変更を余儀されなくなるほど、僕の意表を突く行動をとる事もある。
 やっかいなことだけど、ある意味、これこそが創作者として、これからの辛い執筆活動の段階における最高の醍醐味とも言える。

 一応、結末も知っていながら、この作品がどんな結末を迎えるのか、実に楽しみである。
 ただ、今回は予想以上に長い作品にならないよう、これだけは気をつけながら、読者の皆さんの反応を楽しみにしながら、これから数ヶ月の労作業に臨んでいこうと決意している。




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